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2008年6月10日 (火)

「飢人身ヲ投グル事」

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中世史に関心を持つ者なら、絶対に、

外せない史料のひとつが「太平記」だ。

その中で、筆者が一番、印象的だと思う、挿話がある。

巻第33、版本では僅か2ページに過ぎないところだが、

強烈なメッセージを、現代の読者に送り続けているのだ。

 …果てしなき南北朝の騒乱は、既に20年以上も続き、   

  都は焼け野原になる。あちこちに白骨が転がっているような、

  惨憺たる有様である。

  かつては豊かな生活をおくっていた、ある下級貴族、

  今は全ての財産を失い、夫婦だけが子供二人を連れ、

  あてどもなく都を落ちていく。

  飢えた一家。夫はとある家の門前に立ち、

  食を乞うが、その家の者に怪しまれ、

  袋叩きに遭ってしまう。夫の帰りを待ちわびる妻子たちは、

  道を通る旅人に、夫が殺されたと聞き、川に身を投げる。

  一方、やっとの思いで切り抜け、いくばくかの木の実などを、

  持ち帰った夫は、変わり果てた妻子の姿を見て絶望し、

  自らも後を追って、身を投げてしまうのだった…

「太平記」の作者は、このような惨事の責任は、

ひとえに、私利私欲を貪り、簒奪と贅沢に耽る時の為政者、

(武家方、大名たち)にあると、痛烈に批判する。

翻って、今の時代、どうしようもない「闇」を感じさせる、

惨事が続くのを見るにつけ、

筆者は「太平記」のこの物語を思い出す。

中世の人々でさえ、為政者の悪徳を、

鋭く見抜き、告発しているのだから…

(写真 Caplio GX100)

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