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2015年7月28日 (火)

説経節「をぐり」を読む(23)

B15072603

鬼王、鬼次兄弟、口々に漏らすに、
「すまじきものは宮仕えとは、よく云ったものよ。
 お命じなったのは御主君、手に掛けるのもその御子。
 血を分けた親でさえ、子供に背いて殺される世の中だ。
 進退ここに窮まりて、是非も無し」とて、
まずは、いぬゐの局へ参り、
照手姫に事の次第を申し上げる。
「小栗殿と十人殿原は、もはやお果てになりましたぞ。
 斯くなる上は姫様も、御覚悟なさいませ」
照手姫、涙に咽びながら、
「何を申すか兄弟。いろいろお引止めしたのに、
 今の憂き目の悲しさよ。この由を少しでも知ったならば、
 殿が最後に御抜きになった刀を取って、
 我が胸元へ突き立て、ともに自害したものを」
と搔き口説くも、詮無きことであった。
B15072604
遂に覚悟を決めた照手姫、形見の品々を取り出し、
「この小袖を兄弟たちに取らせます。
 私を想い出した折々に、念仏申して給べの。
 唐の鏡や手箱は、寺々へ寄進申し、
 我が亡き跡を弔うように…」
「浮き世に長らえば、想い残すことも多くなりましょう。
 されば疾く参ろう」と自ら牢輿にお乗りになった。
「我もお供を」と女房、召使いに至るまで、
輿に縋り、さめざめと泣き付く有様である。
(捨身 Canon S110)

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