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2015年7月29日 (水)

説経節「をぐり」を読む(24)

B15072802
嘆き悲しむ女房、召使いたちに、
「名残惜しきは尤もなれど、
 これ以上、浮き世に未練を残したくありません。
 今は鉦鼓叩き、念仏申して、
 疾くゝ末期を遂げさせ給べ」と諭す照手姫。
鬼王、鬼次兄弟、相模川の川面に小船を降ろし、
姫を乗せた牢輿を積んで漕ぎ出した。 
艪の音に驚いたのか、ぱっと飛び立つ鴎や千鳥、姫御覧じて、
「千鳥でさえ、友を呼ぶものを、
 この私は、誰を頼りにをりからが淵へ急ぐかの」
程なく船はをりから淵に辿り着く。

B15072801

兄弟、この期に及んで、何を迷ったか、
此方に沈めん、彼方へ沈めんと、なかなか決心がつかない。
兄の鬼王、弟の鬼次へ囁くに、
「なあ鬼次よ。牢輿の中の姫の御姿を観参らせば、
 日出とともに蕾となる花の如くなり。
 一方、我ら両人と申せば、
 日没とともに散る花の如くなり。
 いざ、お命をお助けしよう。
 姫を逃した咎で、如何なる罪科に問われようとも、
 其はそれ、よいではないか」
「そのような仕儀ならば、お助けいたしましょう」
兄弟は牢輿の重石を切って外し、そっと流れに押し出すのだった。
B15072803
(捨身 Canon S110)

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