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2015年7月30日 (木)

説経節「をぐり」を読む(25)

B15072902

流れ往く牢輿の中で、
照手姫は、西方へ向かって手を合わせ、
一心不乱に、観音経の文句を唱え続ける。
「五逆消滅、種々浄罪、一切衆生、即身成仏…」
(五逆の大罪は消滅し、様々な罪を浄め、一切の衆生は、
 此の身の儘で仏と成る…)
「願わくば、よき島へお上げになって給べ」
観音も哀れと思召したのか、
やがて牢輿は「ゆきとせが浦」へ吹き寄せられた。
「ゆきとせが浦」と云うのは、何処だか判らない。
相模湾沿岸の某所であろうか。
B15072901
浦の漁師たちが、寄せ来る牢輿を見つけ、
口々に云い合う。
「何処かで祀って流したのだ。観て参れ!」
「おい、出入り口が無いぞ」
「なれば打ち破ってみよ」
何らかの祈祷か供養で、
水辺に形代を流す風習があったのだろう。
或いは、熊野の補陀落渡海のようなものをイメージさせようか。
B15072903
早速、櫓櫂を振るって、打ち破ってみると、
中には、然もか弱き風情の姫一人、
涙ぐみながら、座っていらっしゃる。
「やはりそうだったか。
 この頃、ことのほか不漁だったのは、その女のせいよ。
 魔縁化生のものか。将又龍神のものか。
 何者か申さねばこうしてくれよう!」
と漁師たち、櫓櫂で姫を散々に打ち据える始末である。
すると「のう船頭さん。如何したのかな」と、
声を掛ける人があった。
(捨身 Canon S110)

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