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2015年8月 1日 (土)

説経節「をぐり」を読む(27)

B15073002

漁父の大夫、姥の酷い言い草に呆れ果て、
「御身のような、邪見な姥と連れ合って、
 共に魔道へ堕ちるより、
 家財産は全て進ぜる程に、離縁いたそう。
 それがしは、姫と一緒に、
 諸国修行へ旅立つとことにする」と切り出した。
姥、ここで大夫に去られてはまずいと、
「今のは冗談ですよ。お互い子も無いことだし、
 姫を末々の養子に頼み参らせよう。
 お戻りあれ。大夫殿」
大夫は善き人だったから、この一言で気を取り直し、
沖へ釣りに出かけてしまった。
さてこそ、留守の間に、姥が企む「謀反」の恐ろしさよ。
「男と云うものは、色の黒い女は嫌いだそうだ。
 姫を塩焼き小屋の煙出しへ追い上げ、
 松の生木を焚いて燻し、色黒うしてしまえば、
 大夫殿も嫌になるだろう」と燻し攻めにかかった。
激しい煙が姫の目口に入る様は、例えようもない。
しかし、抑々照手姫は「照る月日」の申し子なのである。
千手観音が現じ給い、影の如く寄り添って守護するので、
ちっとも煙くなく、夕方になっても、
恰も白き花に薄墨を差したようにて、
一層美しさが際立つのだった。
姥はますます腹を立て、遂に禁じ手に出る。
ついでながら、もうお判りだろうが、
大夫殿、実は照手姫に「ほ」の字なのだ。
流石に姥の目は誤魔化せない。
中世世界であっても、初老男の哀愁は変わらないわけだ。
(捨身 Canon S110)

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