« 説経節「をぐり」を読む(27) | トップページ | 説経節「をぐり」を読む(29) »

2015年8月 2日 (日)

説経節「をぐり」を読む(28)

B15073003

釣りから戻った漁父の大夫、

「姫は如何した。姫は…」と捜すのだが、姿が観えない。

「さあ、あなた様の後を追って、出て往きましたよ。

 若い人のこと、海へ身を投げたのやら、

 六浦の商人が船に乗せて往ったのやら、

 この姥も心配なのですよ」と姥が涙ぐむ。

実は、燻し攻めが、上手くいかなかった腹いせに、

六浦津の商人へ、銭二貫文で売り飛ばしてしまったのだ。

ところで、銭二貫文とは、現在ではいくらになるのだろうか。

中世世界の貨幣価値を換算するのは、かなり難しいが、

仮に銭一文が\100前後とすれば、100文(実際は銭97枚)で、

「さし銭」(紐を通し一括りにする)にして、約\10000。

それを十さし繋げて、銭千枚(970枚)が一貫文だ。

多少の物価変動も考慮に入れると、

一貫文は十万~十五万円ぐらいになるか。

絵巻の場面(上掲)では、姥が一貫文を手に握り、

もう一貫文を肩に掛けているのが判る。結構な重さであろう。

照手姫は、二十~三十万円で、売り渡されたわけだ。

人身売買が横行した中世世界の相場としては、

然も有りなんと云う値段だったのだったのか。

尤もらしく取り繕った姥であったが、大夫は騙されなかった。

「姫を売り飛ばして、やすやすと銭二貫文せしめ、

 うわべだけの空涙を見せたのだろう。

 どうして、それがしの目が節穴であるものか。

 家財産全て遣わすから、離縁いたす」

この後、大夫は、髻切って西へ投げ、

(専ら西方浄土を目指す意味か)

墨染の衣を纏い、鉦鼓を首に掛けて、

鉦叩き、或いは時衆の出立ちか

山間へ閉居、日々念仏申して過ごしたと云うことだ。

B15073004

(捨身 Canon S110)

|

« 説経節「をぐり」を読む(27) | トップページ | 説経節「をぐり」を読む(29) »

歴史(中世史)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 説経節「をぐり」を読む(27) | トップページ | 説経節「をぐり」を読む(29) »