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2015年8月 4日 (火)

説経節「をぐり」を読む(30)

B15080301

さて、青墓宿の君の長と云えば、
百人の「流れの姫」(遊女)を抱えるほどの、
「有徳人」(うとくにん)だった。
照手姫を篤と御覧じて、
「さあ、百人の流れに匹敵するくらいの姫を手に入れたぞ。
 これで、一生安楽に暮らせるわい」
「ところで姫よ、この内では国の名で呼ぶ習わしになって居る。
 生国は何処かの」
姫、涙ぐみながら、小栗の里を偲ぶ縁とばかりに、
「常陸の者です」と答える。
「今日から、常陸の小萩と名付けよう。
 明日より、関東鎌倉への上り下りの衆の袖を引き留め、
 御茶代を頂き、御慰めするのだ。十二単も参らす」
もとより、姫は即座に拒絶。君も長は、さらに厳しく詰め寄って、
「明日にでも、蝦夷、佐渡、松前へ売り飛ばし、
 足の筋をば断ち切り、一日一合の食事で、
 昼は粟啄む鳥を追い、晩には鮫の餌となるか。
 それとも、十二単に身を飾り、流れ(遊女)に立つか。
 遠慮無う選べや、常陸の小萩殿よ」
「たとえ、如何ようになっても、流れに立つことはありませぬ」
「憎き申し様だ。ならば下女十六人分の下働きをさせようか」
かくて姫は、百人の遊女(宿に着く)百頭の馬、百人の馬子の、
世話を、たった一人で背負わされてしまう。
B15080302
だが、何と云っても、彼女は「照る月日」の申し子、
千手観音が影のように寄り添い、守護されるから、
下女十六人分の仕事よりも、素早いという有様である。
しかも、絶えず念仏を唱えながら働くので、
「念仏小萩」と呼ばれるようにもなって、
いつしか三年が経った。
B15080303
(捨身 Canon S110) 

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